どうも、おかきです。
みなさん、あらゆる自然物、建築物を布で包んでしまうアーティストがいたのはご存知でしょうか。まさに「何これ珍百景」的なアートなので、ひょっとすると彼らの作品を見たことがある人もいるかも知れません。
その「包む」アーティストこと、クリスト氏が2020年5月31日にお亡くなりになりました。
大きく活躍し始めたのは60~70年代からと、現代アートという括りだと、かなり古いアーティストにはなりますが、今のアートに多大な貢献をした人物であり、夫婦二人三脚で2000年代も活躍を続けたアーティストです。今回は、そんなアーティスト夫婦に関する記事です。
「いや、誰?」と思う人も、一度読んでもらえればと思います。
ちなみに、5月末のニュースが今になっての投稿なのは、このサムネの絵に時間がかかったからだ。
1. クリスト夫妻って、どんな人?:プロフィール
軽くまずどんなアーティストだったか、説明します。
1960年代ごろから活動開始、「特定の場所」のために作られた、サイト・スペシフィックアートを代表するアーティストで、先ほどにも述べた「包む」するアートで有名です。
箇条書きですが、簡単に説明を並べておきます。
- 本名: Christ Vladimir Javacheff氏、
1935年のブルガリア出身で、パリでアート活動を開始、ニューヨーク在住。
2020年5月31日に死去。享年84歳。報道によると、死因は自然死(Natural causes)とのこと。 - 1960年代のパリで、「梱包」アートを開始する。公共建築物を梱包するなど、大胆かつ奇抜なアート作品で名を馳せる。作品の性質上、実現したプロジェクトはそう多くないが、『水に浮かぶ橋(The Floating Piers)』など、21世紀に入ってからも活動は精力的に継続。
- 60年代のパリでJeans-Claude夫人と出会い、以降、夫婦二人三脚で活動。夫人は2009年に死去している。ちなみに出生日は奥さんと同じ1935年6月13日。
2. 公共空間をアートに
クリスト夫妻の最大の功績というと、アートを公共の場まで拡張させたことでしょう。
1960年代ごろになると、アートが絵画の枠を超えるようになり、インスタレーションといった立体作品など、アーティストたちの飽くなき探究による、活躍の場を常に拡大していきました。ただ、それは美術館などの建物内に収まるものや、ある場所の一角に設置されたアートで止まっていました。
クリスト夫妻は、そんなアートを公共の場所・自然空間に解き放ったのです。彼らも最初は様々なインスタレーションを手掛けたのですが、活動の末、公共・自然の空間に入り込む「アート・プロジェクト」を構想するに至りました。「包む」アートばかり取り沙汰されていますが、夫妻としてもそれについては好ましく思っていない模様。「包む」は、あくまで一表現として捉えているようです。
以降、彼の作成したアート作品、ないしアート・プロジェクトを紹介していきます。
あまりにも巨大なアートであるため、「期間限定」という制約でしか残されないアート。ただそれが却って、アートに新鮮さを与えます。(期間限定なので、今行っても見られません!)
ちなみに、これらのアート作品を作成・実施するにあたって、なんと寄付金は一切受け取っておらず、夫婦ご自身のアート作品での売り上げからプロジェクトを実施しています。プロジェクト実施に漕ぎ着けるまで、数十年近くかかったりするようなので、かなり大変だったと思いますね。。。
- Wrapped Reichstag(ドイツ ベルリン市、1971年着想、1995年実現)
ドイツの帝政時代に使われた旧帝国議事堂に、銀の布を覆い被せたアート。布がちょうどいい独特の幾何学造形を生み出しており、とても面白い作品です。サムネイルはこれ。
- Surrounded Island(アメリカ フロリダ州マイアミ、1980年着想、1983年実現)
最も有名な作品はやはりこれでしょうか。米国フロリダ州マイアミに浮かぶ11の島を、ポリプロピレン製のピンクの布で囲ってしまうというアートです。巨大なピンクの布を島の周囲に敷き詰めて、景観に新しい形を与えるという、挑戦的なアートです。
私はこういったアートが好きなのですが、恐らく現代で再現すると、環境団体にすごく責め立てられそうな、、、気はしますね。
3. プロジェクト化するアート
繰り返しになりますが、戦後間もないアートの世界では、未だに「絵画」がメインストリームを占めていました。ただ、徐々にアートが絵画の枠から飛び出て、絵画以外の形態を取るようになり、そして1960年代から、ついに自然などの外部空間に飛び出すようになります。環境を利用したアートと言ってしまえばそうですが、奇抜・大胆な物も多く、もはやアーティスト自身のための「実験」「探求」「チャレンジ」と言えるものでしょう。
ランド=アートなど、自然を使ったアートは、いくつかありますが、ここまでの規模をしかも公共空間で実現するアーティストはいませんでした。まさに、パブリック・アートの先駆者的存在と言えます。こういった公共空間へのスペクタクル拡大は、現代アートにも通ずるところがあり、実際にかたち・方法を変えて、現代でも息づいています。
現代の同類アーティストと言うと、花火を使う中国人アーティスト、蔡國強(ツァイ・グオチャン、Cai Guo-Qiang)が有名でしょう。2008年の北京オリンピックの開会式で「足」の形をした花火を覚えているでしょうか?実は、彼が指揮をとったアートなのです。
ツァイ氏のドキュメンタリー映画『ヘブン・ラダー』の中で、あるアート関係者の口から語られるのですが、こういった大規模アートは、「当局といかに交渉し、莫大な資金投入を継続できるか」が決め手のようです。もはやこうなると、ビジネスマンですね。
4. 死後も生き続けるクリスト夫妻の挑戦
クリスト夫妻は死去していましたが、なんとまだ継続中のプロジェクトがあるようです。
それは、なんとパリの中心、凱旋門を包むプロジェクト。
クリスト夫妻の数々の試みは、ここパリから始まったのですが、パリで実現するプロジェクトの中で、この凱旋門だけは、1962年に着想されて以来、未だ実現していません。そして50年以上経過した今、ようやく彼らの試みは、またパリに戻ってくるということになります。
実は、今年実施予定だったのですが、コロナのせいで2021/9/18~10/3に実施延期となりました。偉大なアーティスト夫妻が遺した最後のアート、是非楽しみにしたいと思います。
なお、彼らが実現していない作品は、もう一つ、「The Mastaba」という作品があるのですが、石油のドラム缶を41万個ピラミッド状に積み上げるという規格外の作品。実現に向けUAEに訪れるなどしていたようですが、実現するのか?甚だ怪しい模様。どうなるかわかりませんが、凱旋門が最後に締めくくりと考えるのが無難でしょう。
(ちなみに、Mastabaだけは期間限定ではなく、唯一の恒久作品とのこと)
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今回の記事は、これで以上です。
ニュースから軽く一ヶ月経ってしまいましたが、「公共空間にアートを」という精神は、今の現代アートにつながって行く話なので、是非とも取り上げたいと思いました。
にしても、奥さんに先立たれて11年も経っているのですが、夫婦共同でアートに携わるっていいですね〜。仲睦まじい夫婦って、なんか羨ましいです。私もこんなお嫁さんほしぃ。。。
ではでは。
2020.7.5 Sun 10AM
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