おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

【アートの旅#6】これが日本誇る北斎大先生のアート、北斎展@高松市立美術館 (2020/9/12~10/18)

どうも、おかきです。

 

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先月、高松市立美術館で開催されたアート展『世界が絶賛した浮世絵師 北斎展 =北斎からアンリ・リヴィエールまで』に行って来ました。現代アート大好き人間の私は、元々別の展示が目的だったのですが、非常に良かったので、ブログに上げたいと思います。今回は、そのレビュー記事です。

 
実は、もうこの展示会は終わってしまっているのですが、他の都道府県でも葛飾北斎展をやっている模様。本屋でもやたらと書籍が置いているのですが、どうやら今年2020年が生誕260年。しかも来年は映画『北斎/HOKUSAI』を上映予定と、北斎ブームが巻き起こっている(巻き起こされている?)ようです。単なる展示会に行った「記録」ですが、そんな状況になっているようなので、今回遅ればせながら記事にしました。

 

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1. だいたいこんな展示会

その名の通り「北斎展」なので、葛飾北斎(1760~1849)の展示がメイン。20歳から浮世絵師になり、初期の歌舞伎画から、「東海道景」「富嶽三十六景」など有名な風景画、他にも晩年描いた妖怪画、漫画、油絵など、まさに自称:画狂老人の名に恥じぬ圧倒的な展示です。事実、本展示会の総展示数170に対し、北斎の作品は120展という圧倒的ボリューム。その中でもメインディッシュの風景画集『東海道五十三次』『富嶽三十六景』に関しては、全ページが展示されています。


葛飾北斎以外にも北斎の弟子たちや、彼の影響を受けた人たちの絵が展示されていました。
アート展名の末尾「アンリ・リヴィエール」は、なんとフランス人画家。弟子、、ではありませんが、北斎の『富嶽三十六景』の影響を受け、リトグラフ画ですが『Trente-six vues de la tour Effel(エッフェル塔三十六景)』でパリの光景を描きました。そんな彼の展示もされていました。

 

世界が絶賛した浮世絵師 北斎展|高松市美術館公式サイト

 

  • 展示会名:世界が絶賛した浮世絵師 北斎展 =北斎からアンリ・リヴィエールまで
  • 開催期間:2020/9/12(土) ~ 10/18(日) 
  • 展示場所:高松市美術館
  • 展示品: 葛飾北斎(彼が人生で描いた作品群、富嶽三十六景など120展)がメイン。他北斎の弟子、アンリ=リヴィエールなどの作品もあり、総合計170点。
  • 備考: 撮影禁止

 

 

2. 感想

今回のアート展ですが、非常に満足です。


正直、ニホンガにはあまり明るくはないので、今回シロウトレベルの感想しか言うことができませんが、『富嶽三十六景』含め、世界的に有名な北斎の絵をこれだけ堪能できるのは中々ないと思います。しかも、一地方の美術館で。正直、現代アートラヴァーの私からすると、近世の絵画を見てもそう思うのですが、「博物館」がすることでは?と思ってしまいところはありますが、美術品としても一級品である、北斎の作品を拝めるのは、貴重な機会でした。


この展示会での見どころは、なんといっても『富嶽三十六景』でしょう。かの有名な『神奈川沖浪裏』『凱風快晴』などは勿論ですが、他の残りのページの昨日も堪能できました。あとで細かい感想を付け加えますが、北斎の工夫を最大限凝らした作品ばかりで、とても印象的でした。


また、今回の展示会では、富嶽三十六景に限らず、北斎が生涯通じて描いた作品群が展示されているのも高評価の点でした。初期の頃からの歌舞伎絵では、線描から色彩に至るまで繊細な絵になっており、のちの人生で描くような繊細な描写の片鱗がこの頃からありました。風景画では構図の探求にも取り掛かり、また江戸後期ということもあり、西洋画の描写・遠近法にも勉強、そして更には油絵にも挑戦。北斎の油絵って見たことある人はかなり少ないと思います。蛙と蛇、ナメクジが睨み合ってる三すくみの絵『三竦(さんすくみ)の図』なのですが、写実的な表現でリアリティがあって江戸時代の人間が描いた絵とは思えないレベルです。


ただ、正直最後のアンリ=リヴィエールは要るのかなぁと思ってしまいました。葛飾北斎の「富嶽三十六景」を見てパリ版「三十六景」を作ったので、合わせて載せてやろうという魂胆だと思いますが、どうしても尻すぼみ感が否めませんでした。個人の展示会でも、関連する他アーティストとの出会いも重視する私でしたが、北斎の弟子たちは良しとしても、パリ版「三十六景」を作ったアンリ=リヴィエールは違うかなと思いました。構図は頑張っていますが、都市風景なので、浮世絵との繋がりというより、写実主義的な系譜を感じざるを得ませんでした。これも出会いだと思いますが、正直ちょっと違うかな〜という感じです。

 

3. 画狂老人(自称)としての人生

さて、ここではもう少し深いところまで入っていきたいと思います。

北斎の生涯を通じた作品を見続けましたが、繊細な描写を含みつつもダイナミックで斬新な「構図」「造形」にあるのではないかと思います。数ある作品の中で『富嶽三十六景』が高評価なのは、その「構図」「造形」が特に光っていたからだと思います。山の位置を変えたり、。例えば『神奈川沖波裏』も波打つ海の向こうに富士山が見えるという非現実的な風景によって見る者を惹きつけます。

今回の展示会では、個人的には『凱風快晴』が一番好きだなと思いました。この絵は、初夏の暑さで雪が溶け、富士の美しいイメージとは異なる、醜く赤い山肌を晒した赤富士を描いた絵です。(下のチケット画像は、その絵の一部です)

 

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神奈川沖波裏』とは違い、富士山を一番前に移動、頂上を右側に寄せ、あとは左下に伸びる山並みだけを描いています。この造形が山であることを感じさせないほど、かなり平面的。長〜い1本の線がただただ左下に伸びているだけです。通常風景画であれば、全体の光景を意識したり、より写実的に詳細に描くものだと思いますが、ここまで大胆すぎる造形には舌を巻かれるばかりです。彼の多彩な技術力を持ってすれば、ありとあらゆる表現ができたはずなのに、なぜこの「一本の線」に至ったのか、もし北斎が存命であれば、問いただしたいところです(笑)。浮世絵らしい奥行きのある藍、赤の色彩・コントラストもすごいのですが、私はそこにばかり目がいってしまいました。

 

最後に「斬新」とか「大胆」といった言葉を使ってしまいましたが、北斎の作品は、総じて「親しみやすい」です。当然、江戸時代のものなので、時代は大きく異なりますが、北斎の風景画といい、どこか「漫画」っぽい。最初期から見られた繊細で丁寧な表現がありつつも、どこかそこには、面白おかしさを捉えています。あまり語れていませんが『東海道五十三次』では、東海道の各名所を描いているのですが、人々の生活が生き生きと、面白おかしく描かれています。また、北斎の絵は有名なので、大型ポスターので目にしてばかりですが、実物サイズは意外と小さい。実はあのGreat waveこと『神奈川沖波裏』も、ジャンプコミックの見開きサイズくらいです。今でこそ英国美術館にも飾られるほど、アート史の傑作とされていますが、元々貴族が持っていたものではなく、普通の書店で販売されていたものです。なので、サイズも庶民レベル、庶民に親しまれていたと考えると、なんか親しみを覚えますね。

 

 

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今回の記事ではこれで以上です。


私の現代アート寄りの好みからして、あまり近代以前のアート作品(しかも日本の)を見る機会は少ないのですが、歴史的にも美術的にも価値のある北斎の作品に出会えたのは、本当にいい機会でした。歴史の偉人に想い・生き様に思いを馳せる、歴史ロマンチストではありませんが、浮世絵だけでなく、西洋画の表現、油絵などに取り組む「画狂老人」としての姿勢は、もはやアッパレとしか言えませんね。完全に展示会のプロモーションにやられていますが、来年公開の映画『北斎/HOKUSAI』も気になるなぁと思ってます。

 

ではでは。

 

2020.11.29 Sun  

 

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