おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

【おかきズム書評 #2】藤田令伊氏:『現代アート、超入門!』~至高の入門書、さあアートの世界へ!~

どうも、黒豆おかきです。

 

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アート記事を書いていくぞ!と思ってるので、ここ最近アートの歴史の勉強を日々怠らずやっています。まだまだ初心者なので、週数冊くらいのペースで読んでます。ただインプット、インプットの毎日で、休日になったら美術館に行っちゃうので、中々ブログが書けなくて正直困ってます(笑

今回は、数々読んだ書籍の中でも、これは!というのを取り上げたいと思います。

 

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1. 大体こういう内容

アートライターをされている藤田令伊氏によるアート本。(一応言うと、無茶苦茶有名な人!という訳ではないです。)ずばりタイトルにある通り、現代アートにつて優しく教えてくれる!という内容です。


本の構成は、数々のアート作品を取り上げては解説していくという、まあよくあるパターン。取り上げている作品は、マティスの野獣派(フォービズム)、ピカソキュビズム以降の現代アート計12作品が取り上げられており、パブリックアート、タブーを攻めたアートなど色々と取り上げています。

特徴としては、やはり優しく解説してくれるということ、読者に「この絵は何を書いているか分かりますか?」とか「この絵は上手いと思いますか?」とか、率直な質問を問いかけてくる形式で、その上で絵画の内容、歴史等を教えてくれます。


2. 現代アートは、"気づき"のアートである。

さてこの本の総評ですが、サイコーです。
優しい語り口調でありつつも、押さえるべきところは押さえ、アドバイスも中々秀逸、とても良いです。

正直、読者に優しく擦り寄ってくる系は私は嫌いなのですが、この本の語りには好感が持てました。内容は頭に入ってきやすくその一方で筆者としての率直な意見を出してくれます。「何を書いているか分かるか」に対し、著者が「私だったら分からない」と回答していたりと、割りとズバズバ言ってくれます。私は数多くのアート系の本を読んできましたが、いきなり時代背景・技法など専門的な話に入るか、もしくはウンチク以外の何モノでもない余談に入ることが多いです。それらと比較すると、どこかアート作品に対し「真に」迫っている、そんな意識を感じられます。


ではなぜ著者は、こんな面倒な対話形式の解説書にしたのか?
曰く、現代アートは"気づき"のアートだからです。

大体想像がつくかと思いますが、現代アートは見ただけではよく分からないモノばかりです。中世絵画、近世絵画であれば、宗教画だ風俗画だ、はっきりと人類社会で共有されたイメージがあるのですが、今の現代アートは、作品によっては理解不能なほど複雑になってしまいました。なので鑑賞する側は、アート作品が持つ限られた情報から「気づく」必要があります。

そのため、本の中では著者はまずは読者に考えさせるよう仕向けさせるのです。一体何を書いているのか?なぜこうなっているのか?。その上で、歴史的背景解説など、押さえるべきところはしっかりかつ端的に説明してくれるので、アートを知らない人にもとっかかりやすい良い本です。優しく解説してくれるので、完全初心者向けかな?という感じではありますが、そもそも現代アートというトピック自体がかなり難題です。

 

あと作品チョイスも良いです。文庫本なので12作品と少ないですが、抽象画、シュールレアリズム、コンセプチュアルアートポップアート、他にもサイトスペシフィックアート、タブーなアートなど様々、カラー画像もある(数作品だけモノクロですが)ので、見ながら解説を聞くことができます。結構現代よりのアートも出てくるので、満足できました。

 

 

3. さあ、最高のアートを探そう

さて最後に、この本の最もいいと思ったのが、最終章です。
数々の著名なアーティスト、アート作品を紹介していくが、最後の最後になって無名の作品を紹介してきます。菅亮平さんの『an actor』、暗所の中にスポットライト、そのスポットライトに木の人形が横たわって置かれている、そんな写真アートです。

まだ私もアートについてそこまで知っている訳ではないですが、このアーティストの名前も聞いたことがありませんでした。それもそのはず、著者も「恐らく知らないだろう」と言ってきます。

 

正直一瞬「え?」となってきますが、
そこで著者は一番大事なことを伝えてくれます。

 

「自分にとっての最高のアートを探そう」


著者は、この無名のアーティストの作品を伝えることで、これを最後に教えてくれます。


現代アートとは「気づき」のアート。
大変素晴らしいと評価を集めているアート作品、物議を醸して世間で有名となった作品など様々ありますが、そのアートが自分に感銘を与えるかどうかは自分次第です。アートの造形を見るか、モチーフを考えるか、材質の質感を感じるか、アートから何を読み取るか、何が素晴らしいと感じるか、結局は自分次第です。無論、勝手で自由なあらゆる解釈が許されるとまでは言っていないでしょうが、アートを前にして見て感じる、その「経験」そのものがアートなのです。


思えば、この章に至るまで、著者は解説者でありつつも、読者側に問いかけるような姿勢でいてくれていました。一方的な説教ではなく、読者と優しく対話しながら、未知の現代アートの世界に誘ってくれるような気がしました。この本は、読者に新しい一歩を歩ませてくれる、そんな一冊の本だったのです。

 

 

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今回は、これで以上です。

この本のそれぞれのアートの解説は勿論、やはり最後の章が一番痺れました。
もはや入門書らしからぬ最終章ですが、この多様化・多元化していくアート世界においても、「自分が思うように見て良いんだ!」と思え、とても気持ちが晴れた気がしました。

無論「無知は罪」なので、勉強はやはり必要だと思いますが、世間的な評判は横において、作品としっかり向き合った上で、自分が考えこと、感じたことを大事にしていこう!、そう思えました。もはや私にとってこの本は聖典です。この本でいたく感銘を受けたので、著者のブログをお気に入り登録してしまいました(笑


今回あまり書けませんでしたが、要所要所に挟まれるアドバイスもなかなか良いです。アート鑑賞における知識の必要性など、アート付きであれば、ためにある話も満載です。読まれる場合は、作品解説だけでなく、その辺りもチェックしてもらえれば、より一層この本で学べると思います。

ではでは。

 

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