どうも、おかきです。
今回は、アート展をめぐるコーナー「アートの旅」回です。
この記事では、今年2020年1月末に京都市立博物館で行われた「Kyoto Art for Tomorrow 2020 京都府新鋭選抜展」についてお話ししたいと思います。
※この展示会はすでに終了しています!
「新鋭」というと「学生さんですか?」と思われますが、どのアーティストもそれなりの経歴を持つ人ばかり。創意工夫を凝らした作品も見られ、作品は数十いるので、バリエーションの富んだ展示会でした。
「なんだ著名なアーティストじゃないのか」と思わずに、少しでもアートに興味がおありであれば、是非読んで下さい。
なお、この展示会では、毎年有名アーティストの特別展を併設。今年の特別展:宮永愛子「うたかたのかさね」については、↓の記事で取り上げています。
※この展示会はすでに終了しています!
1. 展示会について
この展示会は、「京都府新鋭選抜展」という名前から察せられる通り、京都府のアート活動の振興を目的とした、「京都の地にいる若手芸術家のための発掘展示会」となります。たまに地方のxx新聞とかが主催している展示会ありますよね?京都なのでもう少し規模は大きいですが、要はソレです。Kyoto Art for Tomorrowなんて名前がついていますが、実は60年続けられている歴史ある展示会となります。
※京都市立博物館、、、の別館。入り口は奥の近代的な建物の方ですが。
先にも記載した通り、「新鋭」とありますが、学生ではなく、アーティスト活動の経歴がある人ばかり。年齢も30代後半〜40代前半と、しっかりとしたプロのアーティストばっかり。私の不勉強もあるのか、正直1名も知っている人がいなかったのですが、中には海外の国際的なビエンナーレに出展歴があるなど、素晴らしい実績を持つ人もいました。
ちなみに、私が行ったのは、なんと展示2日目。
しかも開館の朝10時に行きました。
まさにアートファン、、、、と言いたいところですが、ただの偶然です。この日の前日に、たまたま乗った阪急電車の吊り広告でこの展示会を見かけ、それについつい釣られて、来てしまいました。
博物館中庭の守護神?
2. とにかくバリエーションがあって面白い
この展示会で思ったのは、とにかくバリエーションが多い。
アーティストが総勢なんと40名。個性あふれる作品ばかりでまさにテーマパーク状態です。
絵画が半分程度と、現代的な感覚で言うと、絵画寄り?の印象を正直受けましたが、他にもインスタレーションなど、種類も抱負です。
入り口から少し進んだところ。右の髪の毛が怖い
絵画については様々。目を見張る造形美・色彩美を持つ日本画っぽいもの、パソコンのグラフィックを利用したアートなどなど、いずれもインパクトを与えるものでした。
他にも写真のコレクションや、金属や陶器、プロジェクターの画像を組み合わせたインスタレーションなどこちらも多種多様、色んな方向から刺激を与えてくれます。入館料はたったの500円なのですが、このバリエーションの多さは見る者を楽しませてくれます。
(この展示会は写真撮影OKです!)
最終エリア、インスタレーション系が大集合。
ここだけ暗所になっていて不思議な空間となっています。
3. バリエーションは凄い!とは言っても、、、
次によくないと思った点です。素人の私なので、こんなことを言うのもなんですが、ストレートに書かせていただきます。
今回の展示会については、全体的な評価としては、行って見る価値があると思いました。
前述の通り、40人ものアーティストの作品が並び、その各々のアーティストが工夫を凝らした、様々なアート作品を見ることができ、とても楽しめました。ましてや、500円という格安入館料で考えると「とても贅沢な体験だな」と思いました。
バリエーションが非常に豊富です。
ついつい作品についている説明文をまじまじと読んでしまいます。
ただ、どこか飛び抜けたものがない、そんな気もしました。
デザイン、メッセージ性など、どこかインパクトに欠けていました。無論、先に述べた通り、バラエティーに富んだラインナップであるのは否定しませんが、記憶に刻み付けるほどの「飛び抜けた」インパクトを感じられませんでした。
もう少し具体的に話すと、大抵アート展に行くと、「おっ、これは」みたいな、そこで何十分も眺めてられるような作品が出てきます。ただ、今回「おっ、これは」がありませんでした。「企画展」ではなく「選抜展」なので、入選した作品をベタ並べにならざるを得ないことが、より魅力を伝え切れていない要因のは理解しているのですが、それでもこれは、、、という感じ。
どれも特徴的。。。ただ「絵画」作品が多すぎないか?という印象が否めない。
(ここに写っている作品がダメという意味ではない!)
あと、もう一つ言うとすれば、やはり良くも悪くも「地方の展示会だな〜」と思ってしまいました。ここばっかりは個人的な趣向も入ってしまうのですが、どうも絵画寄りで、それ以外にしても、インパクトは欠けていました。ありきたりな視点、どこか古めかしい表現方法。日展のような窮屈さを感じてしまいました。もっと伸び伸びしてもいいのに、、、、と思いました。
入賞した作品については、なるほどとは思っていますが、どこか「無難さ」も感じました。展示会入り口で誰が入賞したのかネタバレされてしまったのですが、恐らく言い当てられたと思えるほど、いい作品、、、というより消去法で、恐らく言い当てれたと思います。他の作品が、「う〜ん」という作品がままあったので。(ストーリー性を持たせられる個展になれば見方変わるかも?)
ここまで言っておいて、フォローになってないと思いますが、個人的にはこの展示会は、気に入った部類には入っています。これはっ!と思える作品がないだけで、次の年も是非いきたいと考えています。
さて、ここで終わってしまうと、文句ばっか言ってなんなんだよお前は!って言われそうなので、最後に気に入った作品でも取り上げておしまいとしたいと思います。
アート展のマップ。一人一作品しかないのですが、結構長く感じます。
4. 気に入った作品
- 『自分になる』、小島晶(あき)
2つのプロジェクター画像と、自身の横顔を印刷したであろうブロックのパズル。
左のプロジェクター画像では、顔を組み立てるパズルに挑んでは止める姿が映されています。非常に単調な作業ですが、試しては止める、試しては止める、という不断のプロセス、まさに「自分になる」という題名を表現しています。
その一方、もう一つのプロジェクターでは、別の人間の「独白」が映し出されています。パズルの組み立てと違い、どこかストレートで感情的。なぜ別の人間を使ったのか、意図を読み切れないのですが、恐らく理性と感情の対比に加え、自己と他者の関係を作り出そうとしたのだと思います。(間違えていたらごめんなさい)。
複雑なトピックをシンプルな方法で、自分のアイデンティティーを探す「苦闘」をうまく表現、とても面白い作品です。
実は、この作品が本展示会の最優秀作品。個人的な最優秀作品は別にありますが、選出には異論はありません。
ただ、個人のアイデンティティーというと、ポストモダンの典型的なトピックなので、割と競合することが多いはず、、、なのですが、今回の個展ではそれがなりませんでした。作品について思索を巡らせることが大好きな人間とっては、こういう深イイ作品があまりなかったのが辛かったです。。。
- 『mountain』、山岡明日香
和風テイストをおりまぜた山中の風景を描いた作品。風景絵画というとありきたりなジャンルですが、鮮やかな色と、(写真では分かりにくいですが)思い切ったタッチで、見る者を引きつけます。
絵画多すぎ!と言いましたが、この作品の色使いは非常に気に入っています。
- 『かたわらはかなた』、葛本康彰
淡い青色の器の形をした作品。光に照らされて、透けて美しく輝く青色がとても幻想的です。周囲に広がる反射光含めて、とても美しい作品です。器の形をしているので、陶芸作品?、と思いましたが、説明には「ミクストメディア」としか書いておらず、何の材質でできているかは不明。
- 『土の上』、柳瀬杏里
12枚の写真と、作者の心情を綴った数枚の文章による、インスタレーション。
作者の祖母の生前の記憶を、コラージュやボケなどを駆使し効果的に表現。作品は、作者の身内の死という、どこかパーソナルな主題ではありますが、より印象的に表現されることで、より普遍的な、家族の「死」と「記憶」「繋がり」について感じさせるものがあります。また文章にある、祖母の死についての悲痛な叫びも相まって、見る者に力強く訴えかけてきます。私としては、この作品が最優秀賞です。
最初に紹介した『自分になる』も高評価なのですが、この作品にはさらに感じ入りさせるところがあったので、こちらに軍配が上がりました。
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今回の記事は、これで以上です。
いい点、悪い点、思いの丈話しましたが、色んなアーティスト、そして彼らの作品を楽しめたという点で、総合的には、いい「経験」になったと思っています。中々一堂にこれだけのアーティストと作品に巡り合える場は中々ありません。しかも、それを格安の値段で立ち会えるので、新しいアーティストの発掘というには格好の場所だと思います。ぜひ来年も行きたいなと思いました!
ではでは。
2020.5.24 Sun 10PM
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