おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

AIがアートを選ぶ時代へ: 第10回ブカレスト・ビエンナーレ(Bucharest Biennale 2022)

どうも、おかきです。

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人工知能(AI)が議論に上がる度に、よく人間の仕事がAIに置き換えられる。

そんな話がよく上がりますが、そう言った話では決まって、
「ただし、想像力などヒューマンスキルが必要な仕事は、安全圏」だと言われます。

 

ただ、そんな時代も終わりを迎えるかもしれません。

 

 

2020年5月末、
アート界に衝撃を与えるニュースが飛び込んできました。

ついに人工知能(AI)が、アートの企画展を担う時代が来たのです。

 

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1. AI がアートの世界にやってくる:Bucharest Biennale (BB10)


"ビエンナーレ"


そんな名前をよく聞くと思いますが、2年に1度実施される芸術祭のことを言います。
世界主要都市で“ビエンナーレ”の名を冠した芸術祭が実施されていますが、どれもビエンナーレ財団が主催している芸術祭になります。
トリエンナーレは、3年に1度ですね)

 

その中でも、東欧の豊かな文化が行き交う街、ルーマニア首都ブカレストにもビエンナーレがあるのですが、一つの「事件」が起こりました。


ブカレストビエンナーレの第10回目(BB10)で、何と人工知能(AI)が主席キュレーター(chief curator)に選ばれることになりました。

 

数々のビエンナーレが行われましたが、全て企画はアーティストなど人工知能ビエンナーレのキュレーターを行うのは、初めての事例です。



指名を受けた人工知能(AI)は、オーストリア首都ウィーンのSpinnwerk社
拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などに携わる会社で、我らが日本を代表するアーティスト集団「TeamLab(チームラボ)」のアート作品にもいくつか携わっています。


今回のビエンナーレには、そのSpinnwerk社が、得意の技術を存分に発揮する舞台となる訳です。

 

 

ちなみに、人工知能(AI)の名前は、「Jarvis(ジャーヴィス)」。
感の良い人ならわかるのですが、マーベルの「アイアンマン」シリーズで出てくるAIの名前から取られているようです。

 

※キュレーター: 展示会の企画担当者のこと。どういった企画にし、どの作品を展示するかまで携わる存在。
   日本の「学芸員」の英訳に"curator"使われることがあるが、切り離して考えたほうがベター。
 

 

www.biennialfoundation.org

(略してBB10、とても呼びやすい)

 

 

2. BB10の特徴: キュレーターとVR

今回のブカレストビエンナーレでは、二点の特徴があります。


1つは言うまでもなく、人工知能(AI)のJarvisがキュレーティングを行うことです。

ニュースによると、大学・ギャラリーなどが保有するアート作品のデータベースから、ディープラーニングを活用して学習、そして「擬似キュレーター思考」を使って、展示会のアーティスト、アート作品などを選定する予定とのこと。


どんなテーマにするのか、まだ謎に包まれていますが、ブカレストビエンナーレの代々続くテーマは、「文化」。欧州内外における文化協力を通じ、アート分野における、文化の啓発・普及の促進するのが、目標としています。

今回そこにAI(人工知能)が介在することで、より膨大なアート作品を取り扱える分、新しい展示会が生まれるかもしれません。

 

 

もう一つの特徴は、今回の展示会は、ヴァーチャル空間で実施されます。
いわゆる、VR(仮想現実)。しかもVRヘッドセットさえあれば参加可能です。

 

AI(人工知能)ほど衝撃は少ないかもしれませんが、“ビエンナーレ“の規模の展示会で、VRの活用はなかなかありません。空間を超えてアートを体感できる、非常に珍しい機会です。数々のデジタルアートに携わる、Spinnwerkだからこそ為せる技、なのでしょう。

 

 

 

 

 

3. 過去にもAIが起こしたアート界の事件があった?

 少し話を変えます。

 

近年成長が目覚ましいAI技術。ひょっとすると、ビエンナーレ以外にAI x アートで起きた事件はないか?と思い調べてみたところ、やはり「事件」は他にもありました。

 

英国の「アート x テクノロジー」を題した芸術賞、ルーメン賞。
その2018年の金賞に選ばれた作品が、何とAI(人工知能)が描いた絵でした。


どんな絵を描いたのかというと、裸婦画。その名も「The Butcher's son」

検索してもらうとわかるのですが、フランシス・ベーコンのようなグロテスクさを感じるような奇妙な絵画になります。ただ、人が書いたと言われてもわからないような、非常に繊細な筆のタッチが伝わってきます。

 

www.excite.co.jp

 


では一体、どうやって絵を描いたのか?

 

Mario Klingemannという技術者(アーティスト?)がいるのですが、この方がAI(人工知能)に様々なアート作品のデータをインストールさせることで「教育」したのです。

数々のアート作品を投入していくのですが、最初は解像度の低い画像を入れていき、後に高解像度の画像を学習させていくことで、人体の造形を磨いて言ったようです。またその間にも「ノイズ」となりうる画像を学ばせることで、より深みが増す、、、、

 

いまいちよく分かりませんが、一応芸術家の脳の動きを模倣しているようです。

 

たまたま、AIの本を読んで勉強していたから知ったのですが、そもそも人工知能とは、「脳の機能的な動き」を模倣したもの。よくSF作品における人工知能は、人間の手から離れた独立し判断する機能というイメージが出来上がっていますが、少し違います。

 

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詳細は省きますが、AI(人工知能)がまだまだゼロベースであらゆることを判断するのは困難。ただ、そもそもAIの歴史を紐解くと、先に述べたように「独立した思考」というよりは、「人間のある思考回路を機械的に真似したもの」で考えられており、現在の技術では、機能をある特定のところに絞ることで、ある程度の自動化が可能になっているのです。例えば、Amazonが、その人の好みに合わせたグッズを提示するのは、まさに人工知能の力です。

 

先ほどのJarvisの話でも言いましたが、ある程度のデータを人工知能(AI)に学習させながら、機能させていく、これが現代のAIなのです。

そう考えると、Jarvisの件も、ルーメン賞の件も納得できますね。 

 

 

4. 個人的考察:意外とxxなのでは?

中々に衝撃的なニュース。
ただこの件に、個人的には特に問題ないのでは?と考えています。

 

というのも、先に述べた通り、AIというのは「人間の思考を真似て作ったもの」。
AIの進化は目覚ましいモノになってきてはいますが、あくまで人間の「道具」的な役割に落ち着くでしょう。

 

この芸術祭(BB10)を無事成功に持ち込むため、何名かの人間のチェックすることになるでしょう。あくまでこれは私の想像の域を超えませんが、ほぼそういったことが行われることで間違い無いでしょう。

 

一度、人工知能(AI)にひと仕事任せてみよう。ただ一応チェックはする。


せっかく盛り上っているところ水を差すのですが、これがBB10なのだと思います。

AI(人工知能)が介在することで、従来のキュレーター x アーティスト間の人対人のコミュニケーションがなくなります。そのことで、「コネ」といったモノがなくなり、より自由な発想が生まれ、さらにアート界で問題となっている、西洋一極集中の「バイアス(偏見)」がある程度取り払われるのではないかと期待できるところはあります。


 

 
ただ、そこでもう一方で別の問題が発生します。


もしAI(人工知能)が判断した結果に対し、人間の最終チェックが入るのであれば、結局AI(人工知能)が果たす役割はどこにあったのか?、ということです。


色々と調べて知ったのですが、アーティストの展示作品の内容に企画側が介入することは、そこまで珍しいことではないようです。企画展の方針、表現の問題、政治的な理由、、、など。
恐らくこのBB10でも同じことが起こるでしょう。

 

無論、人間のチェックは私の想像の域の話ですが、それが起こった場合、指摘されるのは、AI(人工知能)が下した判断に対してです。

 

どこまでAIが判断するのか?
どこまで人間が対応するのか?


その辺りの裁量の線引きが不明瞭すぎて、そもそもこの企画展って何?という話です。
人工知能(AI)は、「客引き」のネタに終わらないか?、そんな心配もあります。

 

人工知能(AI)を毛嫌いするつもりはありませんが、そのところだけはとても気になりました。ただ、非常に興味深い企画展であるのは事実。今後の動向には期待です。

 

 

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今回の記事は、これで以上です。

 

先にも述べましたが、人間には「人工知能(AI)にはできない何かがある」と言われていましたが、そんな中での衝撃的なニュースでした。


ただ、何も悪い面ばかりだけではない、そう思います。


人間が捕われやすいバイアスを無くしたり、また1つの新しい思考パターンとして有用に使うことができれば、むしろ人間の新しい可能性を発揮するチャンスにもなり得ます。


ビエンナーレの実施は、2年後の話ですが、そんなことが期待できる芸術展であればなと思います。

 

ではでは。

 

2020.6.13 Sat 0AM

 

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[参考記事]

https://www.biennialfoundation.org/biennials/bucharest-biennale/

https://www.theartnewspaper.com/news/the-tenth-bucharest-biennale-to-be-curated-by-an-ai-programme-called-jarvis