おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

アート競売会社クリスティーズの世界4ヶ所同時オンラインライブオークション『ONE』を覗いてみた。

どうも、おかきです。

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みなさん、アート作品の競売(オークション)を見たことがあるでしょうか。


ごくたまに有名アート作品が、トンデモ価格で落札されるニュースが流れることがあるかと思います。最近だと、ZOZOの前澤社長が3年前の2017年に、バスキアの作品を123億円(1.1億USドル)で落札したニュースがありますが、それはまさにオークションで行われた結果です。


2020年7月10日、競売会社クリスティーズが、ライブオークション『ONE』を開催しました。オークションというと、少人数のお金持ちだけの閉ざされた空間というイメージですが、今回は、新型コロナ感染拡大ということもあり、公式Youtube上でライブ放映。

今まで一度もアート・オークションを見たことがなかったのですが、絶好の機会。金曜日夜のボロボロの体でしたが、クローズな空間を覗き見ることにしました。

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Christies Youtubeチャンネル、ライブ動画『ONE: A Global sales of the 20th Century 10 July 2020』より

 

1.  競売会社クリスティーズとオークション『ONE』

クリスティーズは、世界的な競売(オークション)会社の一つです。事実世界のオークション業界は、このクリスティーズサザビーズで二分しているとされています。無論、他のオークションハウスもあるにはありますが、やはりこの2社が圧倒しているといえます。

 

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クリスティーズの競売で、有名なものだと下記のものになるかと思います。

  • 1987年、安田火災社長がゴッホの『ひまわり』を58億円(2250万ポンド)で落札、バブル絶頂期の日本の象徴とも言える大型落札。今も損保ジャパンが保有

  • 2017/11/15, レオナルド=ダ=ヴィンチの『サルヴァドールムンディ(救世主)』が4.5億ドル(当時のレートで508億円)で落札。美術オークションの中で、現在最高落札額。

  

そんなクリスティーズ社が開催したのは、今回取り上げるオークション企画『ONE』です。


先ほども言った通り、Youtubeでオンラインライブですが、コロナ感染拡大の今のご時世、オンラインでのアートイベントは珍しくありません。実際前に紹介した「アートバーゼル」でも、アート作品の鑑賞販売をネット上で行っていました。

 

www.okakism.com

 

では、このオンラインオークションライブ『ONE』の何が特別なのでしょうか?


それは、今回のオークションがリレー形式 ✖︎ 同時中継だからです。クリスティーズは、香港、パリ、ロンドン、ニューヨークの4大都市にオークション会場を構えています。本来であれば、各会場個別で実施されるのですが、香港→パリ→ロンドン→ニューヨークの順で、各会場1時間弱程度で巡回中継されました。一方、「入札」は常時世界各地から舞い込んでくるため、メインの取り仕切り会場は巡回するにしても、全てが完了するまで、4箇所同時中継で対応しました。
 

 

↓の通り、ライブ配信した動画はYoutubeに残っています。もし良かったらご覧あれ。
(ちなみに私が見たのは、パリの中盤くらいからです)


ただし、その前に一つだけ言いたい。
視聴する前に、この後に続く私の感想を読んでからにしてもらいたい。

 

www.youtube.com

 

ちなみに、今回のオークションはZOZOの前澤社長のバスキア(123億円、1.1億USドル)バンクシーのシュレッダー事件がありますが、それは競合サザビーズのオークションで起こりました。盗難で有名なムンク『叫び』シリーズの競売も、サザビーズです。(注:ムンクの『叫び』のほとんどは美術館所蔵で、競売になったのはごく一部です)

 

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追記: 後で調べたところ、サザビーズでも同様のオークションが実施されていたようです。。。ともかく生視聴したのは、クリスティーズの方なので、割愛します。

 

 

2. 素直な見た感想:

さて、このオークション、正直に見た感想ですが、、、
思っていた以上に「淡々と」進行していた印象を受けました。

 
数千万、もしくは億以上も値段のはる、アート作品が何十作品も登場、しかも、ほぼ素人の私でも全てとは言わないまでも、知っているアーティストばかり。現代アート寄りの私は、最初はバリバリのテンションMAXで見ていました。


ただ、作品とアーティスト名の軽い紹介が入った後、間髪入れず価格交渉に入りました。

 

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Christies Youtubeチャンネル、ライブ動画『ONE: A Global sales of the 20th Century 10 July 2020』より
パリ主催時、シャガールの作品競売時。ロンドンの競売場の担当者が、落札価格のアップを交渉中。


「さあ、今作品が現在12millionドルです、12millionです!」
「おっとロンドンから、12.5milllionドルの落札!、、、現在12.5millionドル」
「今度は13millionドル、入札者、ニューヨークに戻ります!」
「13.5millionドル、入札者、引き続きニューヨークです!」


だいたいこんな感じのやりとりが、数分間続いていきます。落札価格が上がり続けるつれ、入札者が減り、最終的には最高額を提示した入札が落札、、、という流れです。実際に見てもらえるとよくよくわかるのですが、文字通り「間」の「髪」も入れず競売に移ります。


アート作品から想像される気品・洗練さというのは一切なく、世界のVIPたちがアート作品をいかに落札するかをせめぎあう、生々しい弱肉強食の世界、、、という感じです。 味気ない、というのが正直なところです。


世界的競売会社が開催するオークション、しかもそれが20世紀のアーティストととなると、安くて数千万円のレベルです。落札価格の刻み方も100万円単位は軽く超えるので、もはや一般庶民には考え付かない状態、、、です。(さらに落札者は、落札価格に加え、手数料云々を取られます)



ちなみに、進行はほぼ全て英語で会話、ただ基本入札値段の数字しか言わないので、非常にシンプル、「ノリ」さえ分かれば誰でもわかるレベルかと思います。ただ注意が必要なのが、主催地の現地通貨で会話しています。基本「数字」だけで会話するので、どこの通貨で会話しているのか?、日本円にするといくらなのか?、そこだけがややこしいです。

 

 

3. 価格形成を見守る楽しさ

オークションについて、当初抱いていた想像と大きく違っていたので、「淡々としている」「味気ない」とか、個人的な「印象」を散々に書いてしまいました。ここでは、別の側面についても触れましょう。

 

アートのオークションという場所ですが、当たり前のことですが、「競売」の場所であることを忘れてはいけません。そう、「見る」ではなく「買う」場所なのです。

 

淡々と進行する理由ですが、結局そこにつきます。

出展作品の情報については、開催実施前に事前公開されています。公式サイトに行けば、専門家が作ったであろう、丁寧な説明が載せられているので、基本それを見た前提で進行します。しかも競売アート作品の数も、合計82。オークション最中にもたもたしていては、入札者も飽き飽きしてしまいます。淡々とスピーディー進行するのは、主催者側の「優しさ」の配慮なのです。

 

あと、入札そのものについても、良い側面があります。競売というと、世間的には、裏がありそうであまりいいイメージがありません。ただ、複数の書籍で述べられていますが、複数の入札者が競い合うことで、公開された場で価格形成が行われるという特徴があります。


というのも、他の売買方法となると、アーティスト・ギャラリーからの直接購入、アートフェアでの購入になります。ただその場合、売り手〜買い手の個人間の値段交渉になってしまいます。ただ一方で、競売に関しては、(建前だろうと何だろうと)複数人で売買の場を共有するという、ある種の「公正さ」が保証されているのです。落札者にしても、他の入札者と競い合った結果購入できているので、価値も保証されているような「満足感」も得られる訳です。(そして、うまくいけば、お得に購入できる)
 

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最近読んだオークション本、またいつか紹介します

 

無論、アート作品の価値・価格形成と格好良く言いましたが、所詮はマーケットの世界の話、ましてや「投機」の現場です。 ただ、アーティスト・アート作品の価値は、競売などのセカンダリーマーケットこそで売れてこそ、なんぼとも言われているのも事実です。「売買」といえど、今のアートシーンには無くてはならない舞台なのです。

 

 

あと素人ながら個人的に思ったのが、値段が形成されていく様は、スポーツの盛り上がりに近いと思いました。アートの入札価格が上手いこと上がっていくところは、正直多くはありませんが、それを言ってしまうと野球もサッカーも同じです。90分、数時間の試合のうち、本当に盛り上がるシーンはごくわずかです。そんな感じで見ていれば、面白いのかなと思いました。オークションでは、アーティストと作品である程度限定されてしまいますが、固唾を飲んで、価格が釣り上がっていく様を見守るのはなかなか楽しいものです。

 

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Christies Youtubeチャンネル、ライブ動画『ONE: A Global sales of the 20th Century 10 July 2020』より
シュールレアリスムのルネ=マグリット競売時、"謎"の姿勢で見守るオークショニアたち。

  

4. 一番高く売れたのは、あのアート。

さあ、色々語りましたが、最後に皆さん大好き、お金の話で締め括りたいと思います。

 

このオークション『ONE』 、3時間強もの長丁場の末、合計4.2億USドル(449億円)もの稼ぎ出しました。並の大企業でも普通こんな金額を数時間もの間に稼げません。これが世界に冠たるクリスティーズの覇権か、これぞアートの力というべきか、それとも資本主義社会の飽くなき欲望なのか、色々と複雑です。

 

82もの競売作品の中で、最高額で落札されたのは、ロイ=リキテンシュタインの『Nude with joyous painting』(Lot 58, 下画像の液晶画面にチラッと見えます)。


落札額、なんと4624万米ドル(49.3億円)。ウォーホルと並ぶ、ポップ=アートの巨人ですから、当然と言えば当然かもしれません。価格がどんどん高騰していくシーンに、オークショニアもつい笑顔がこぼれていました。是非このシーンは見てもらいたい。

 

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Christies Youtubeチャンネル、ライブ動画『ONE: A Global sales of the 20th Century 10 July 2020』より
ポップアートリキテンシュタインの作品の競売、香港の女性オークショニアの笑顔が眩しい。

 

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今回は、これで以上です。

 

今回、アート・オークションという、特殊な場を見ることができて非常によかったなと思っています。あらゆる現代アートの本でも述べられていますが、資本主義社会の現代、アートシートとしては無くてはならないものです。その「現場」を目撃できたのは、今後のためにも、いい体験だったかなと思ってます。あと、先にも述べましたが、価格が競り上がっていくシーンは、どこかスポーツのような面白いところがあります。また機会があれば、見てみようと思います。

 

ではでは

 

2020.8.14 Fri 10PM 

 

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