おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

【おかきズム書評#4】『フェルメール』、寡作アーティストの作品を追い求める旅日記

どうも、おかきです。

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色々ありましたが、アートブログ宣言して約1年が経とうとしています。地道にアート系の記事を積み上げた結果、かつてのメインジャンル、ガジェット記事の数を上回り、グッズ記事にも迫る勢いです。

 

アートブログ宣言するさらに前、もう1年半も前ですが、19年5月の「フェルメール展」からアート記事は開始しました。今回はそんなアート系記事のスタートを作ったフェルメールに関わる書籍の紹介です。

 

www.okakism.com

 

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1. だいたいこんな本

タイトルは『フェルメール』と無茶苦茶シンプル。
じゃあ内容は、かの有名な画家、フェルメールの一生についてなのか?と思ってしまいますが、そうではありません。

本当の内容は、フェルメールの数十作品を追い求め、世界各国に点在する17の美術館を訪れるという話です。作者の植本氏と数名の担当者たちが、オランダ、ドイツ、アメリカなど、フェルメールの数少ない作品がある場所に訪れ、街の空気に触れ、人と交流し、アートを味わう、といった内容です。各作品に関する解説は、かなり限定的、「旅」の部分が強調されています。あとそもそも本の配分も写真が半分以上、絵画が飾られた場所や、美術館の雰囲気など、おしゃれな写真もふんだんに挿入されています。

 

2. 感想:おしゃれな旅ブログといった感じ 

この本を読んだ時の正直な感想ですが、良くも悪くも「旅ブログ」っぽいなと思いました。

おしゃれな写真が多数盛り込まれているので、作品だけにフォーカスしていないのは承知の上で本を買ったのですが、基本的な内容は、アートではなく「旅」が中心です。前述の通り、アートについての解説はあまりありません。確かに、絵画に相対したときに、「細かい点がある」とか「膨らみがある」とかそういった細やかな発見に触れていますが、かなり限定的です。どちらかというと、場所がどんな場所に置かれているか?といった話が多く、それ以外にも、街や美術館の雰囲気や、挿入されている写真をいかに撮ったかなどについても触れており、どちらかというと「旅ブログ」的なところさえ感じます。


正直に申しますと、フェルメールは好きな画家ではあるのですが、どうせ買った本なので、旅ブログで終わらせることなく、もう少し切り込んだところまで入って欲しかったなぁ〜というところ。


ただ一方で、アートの別側面を見ることができたなぁと思っています。それは何かと言うと、「人のアートとの触れ合い」です。しょっちゅうアート本を読みますが、ほぼその大半が理論的な話ばかりです。「このアートの意味はなんだ?」「現代アートとは何か?」とか、「今後のアートはどうなるか?」とか、かなりお堅い話ばかり。ただ、この本では、アート作品だけではない、どういった「空間」や「風景」の中で飾られているのか?について、触れています。街の雰囲気から始まり、美術館の中でどう設置されているか、ブース内の空気、スタッフや観客の人たちの様子をつぶさにとらえています。それらが作品の表現・内容に直接的な関係があるかというと微妙なものばかりですが、そういった細やかな描写が、より作品を印象的・魅力的なものにしていました。特に、人々の描写からは、長年この作品がこの街・美術館でいかに親しまれていたか?が伝わってきて、どこか心がほっこりします。人が生きる社会・生活空間の中でアート作品を鑑賞する、本来であればこういったことをするには、まず現地の美術館に行かなければなりませんが、そうせずともこの本を通して贅沢に味わうことができます。

 


この本は、旅ブログ的な特徴が強く、フェルメール作品についてもっと知りたかったなぁという欲求は満たせませんでした。「人のアートとの触れ合い」というアートの大事な要素を思い出させてくれ、何よりゆっくり落ち着いて読むことができます。小説家原田マハ先生の小説にあるような「人と人の間にあるアート」といった感じ、どこか心温まるところがあります。 


過去に紹介した書籍と違い、「大絶賛」という訳ではありませんが、素直に落ち着いて読める本として取り上げてみました。本屋や図書館に置いているところもあるようなので、是非一度手にとられてはいかがでしょうか?(最近は文庫サイズもあるようです)

 

ではでは。 

2020.9.27 Sun 10PM 

 

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