どうも、おかきです。
気がつけばもう秋。鈴虫の鳴き声で涼しさを感じる時期になりました。
秋といえば読書の秋、芸術の秋。というわけで、どちらにも共通する、芸術系の小説について今回取り上げたいと思います。
今回は、書店では必ず目にする「原田マハ先生」の本を取り上げたいと思います。
元々美術館のキューレーターとして数多くのアートに携わり、小説家になってもアートを題材にした小説を書き続ける、まさにアートと生き続ける人物。前から気になっていたので、原田マハ先生の小説を一つ取り上げたいと思います。
あくまで「小説」で「物語」なので、アート作品とは少し離れた存在ではありますが、アート繋がりという訳で、何卒ご容赦を。
1. だいたいこんな内容
小説『デトロイト美術館の奇跡』は、2011年のデトロイト市経済破綻の時に起こった話を下地にしたフィクション小説です(人物も参考にした実在の人はいるみたいですが)。
リーマンショック後、デトロイト市が多額の債務で経済破綻。その穴埋めとして、美術館に収蔵される、セザンヌなど珠玉のコレクションを売却するのではないか?という話が上がり、全米で論争が巻き起こります。、収蔵作品ポール・セザンヌの『画家の夫人』の行方を案じる、デトロイトの老市民フレッドが行動を起こします。彼の<友だち>の運命はいかに?という話です。
以降、ネタバレありなので、注意です。
2. 総評:アートが人を結びつける ※ネタバレあり
短編小説なので、濃厚なストーリーではありませんが、ほっこりする話でした。作品に魅了された人物たちの群像劇、、といっても市民フレッド、作品寄贈者タナヒル、美術館チーフキュレータージェフリーとたった三人程度しかメインキャラクターはいませんが、この小説の主題であろう「アートが人を結びつける」がしっかり描かれていたと思います。
この小説では、登場人物たちの過去を追体験し、絵画と登場人物の「結びつき」を感じさせてくれます。登場人物たちは、アート作品を「隣人」「友人」と、作品に人格を与えるほど親しみ感じられるものと考えているのですが、そんな登場人物たちの過去を追体験することで、一緒にその思いを共有することができます。最後には彼らと一緒に「やった!」と言える、達成感もあり、涙ありのお話でした。
小説の中にある好きな表現を一つ挙げると、デトロイト市民ジェフリーの亡き妻ジェシカを、デトロイト美術館を表現したときに使った「友だちの家」です。
現実の話になりますが、お気に入りの美術館とかだと何度も足を運び、一つの作品を複数回見ることがあります。一回、二回と来るたびに作品の絵面からディテール、行く果ては油彩のシワ・ひびまで記憶してしまい、それらにすら「愛しさ」「親しみ」を覚えてしまう時があります。憧れとか、感動とか、単なる刹那的な感情だけではない、アートラバーたちの「アートに対する愛情」をうまく表現しているなと思いました。(あと、常設展とかだと「またお前か」みたいな作品もあるのですが、それも同じかもしれませんね(笑。)
ただ、強いて残念だったなと思ったのは、「経済破綻における美術館の逆転活劇」という場面をそこまで活かさなかったなというところ。社会サスペンス的な要素も含みそうな感じですが、割と結構あっけなく解決してしまいます。オチを行ってしまうと連邦政府からの司法担当者が、実はアート好きで、内心「収蔵作品たちを救いたい」と考えており、ジェフリーの熱意を見た彼は、「募金」という奇策を講ずることで、最終デトロイト美術館は行政の管轄から離れ、独立行政法人となることで、債務整理による整理の手から逃れることとなりました。なんと、この3行にわたって書いた前文は、最終章にていきなり語られます。まあ、よくよく考えたら、そこまでの半沢直樹成分は不要なのかなという気もします。
総評としては、正直オチの拍子抜けが否めないので、まずまずと言わざるを得ません。ただ、心が温まるいい話で、人にも勧めたくなる話でした。あと美術館に行って、自分の<友だち>を探しにいきたくもなりました!
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今回は、これで以上です。
このブログでは、なんだかんだで初めての小説を取り上げてみました。
小説はストーリーを共有しないと始まらないので、実用書系の紹介が多くなると思いますが、今後も隙あらば取り上げていきたいと思います。原田マハ先生曰く、「アートへの入り口」になることを願って小説を書いてるということですので、私の書いたブログ記事も、誰かの新しい「アートへの入り口」になればと思います。
ではでは。
2021/10/17 Sun. 9PM
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