おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

【おかきズム書評 #1】田中泰延氏:『読みたいことを、書けばいい』~ って言ってるので読みたいことを書きました~

どうも、黒豆おかきです。

2020年はガンガンブログを書いていくぞ!!と一念発起した、いやしてしまったので、毎日ブログについて頭を悩ませている今日のこの頃です。


と、いうわけで、そんな自分に相応しい、
2019年に流行ったこの本の書評記事を書こうと思います。

  • 田中泰延著、『読みたいことを書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術』、2019年、ダイヤモンド社


大阪に行っていた時に、地下鉄御堂筋線の電車のバナーにあった広告を見て、「おっ、これは」と思い、バスの待ち時間に、私にとってはおなじみ、紀伊國屋梅田本店で購入しました。個人的には、2019年の本では一番気に入っています。


前からブログに載せようと思っていましたが、買ってから軽く4ヶ月も経ってしまってからのブログ投稿です。

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1. だいたいこんな本


初めての書評記事なので、優しくみなさんに伝わるように、本の内容の概略の段落を作ってみましたが、必要ないかもしれません。

なぜならこの本の内容は、

本書を通じて語られるのは、「自分が読みたいことを書く」。
それだけだからです。

 

「自分が読みたいことを書く」。

非常にシンプルで突き刺さる言葉。
どの層がターゲットだとか、どう高い評価をもらえるかとか想定しない。
ただ「最初の読み手=自分が読みたいと思えることを書く」だけ。

ネットで情報が氾濫する中、有名な芸能人でもない限り、頭一つ出るのは難しいです。どれだけ必死に図書館で調べてそれを書いても、注目されるか分からないし、正当な評価をえられるかなんて保証もない。そんな中で、自分のために書いてないものなんて書いても、仕方ないだろ、というわけです。

この本は、ビジネス「文書」を書く人やジャーナリストに向けた本ではなく、あくまでブログとか文章を書く、ライターに向けた本になります。電通を退職し、ライターとして活動をした田中泰延氏の経験に基づいた、強い信念のような物を感じる本となっています。





2. これが本当にあるべき文章術、いや心構え


無論、200ページの普通の本くらいのサイズはあるので、「一次資料を見よう」とか「思考の過程をみせよう」とか、多少のワンポイントアドバイスくらいはしてくれます。


ただ、他の文章術の本と違うのは、
終始「読みたいことを書く」を軸に据えていることです。


通常の本であれば、(これは著者も述べていることですが、)段落の作り方とか、ターゲットの選び方とか、アドバイスを多く、そして網羅的に教えてくれます。一つ一つ項目に分けられており、理解しやすい本もありますが、大抵項目が50とか100になっています。


そういった本には、ある致命的な弱点があります。

その中では、あらゆる項目が相対化されるため、
「で、結局どれが大事なの?」となってしまうことです。


一方、この本では、「読みたいことを書く」の重要性がクリアに宣言されています。そして、著者は本書の中でも何度もその大切さを説いており、一体何が一番大事なのかを読者は見失うことはありません。ライターとしてのアドバイスが書かれていますが、それらは、「好きなことは書いてもいいけど、これは注意しておかないと相手に伝わらないよ」というレベルで説明されています。


「どう書くか」の方法論について説明する本はいくらでも見たことがありますが、ここまで「自分が読みたいことを書く」というたった一つのことの重要性を意識させられる本は、初めてでした。「自分が読みたいこと書いてていいんだ!」という、エヴァンゲリオン最終回の碇シンジ君が感じたであろう感動が自分の中でも起こりました。今も忘れません。
 

 
3. 最後に懐疑的なあなたへ(ていうかこれが本編)

 

さて、ここまで褒めておきながら言うのもなんですが、ある一つ疑問が湧きます。

 


この作者は、じゃあそれを実践できてるのか?

 

 

ハウツー本でよくあること。本でたいそうなことを言っているが、当の本人は実践できているのか?、いつも疑問に思う。要するに「言うは易し、行うは難し」とか言うヤツ。

 
そう考えると、〇〇できるステップ100とか言う奴はかなりアヤシイ。
『読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術』なんて本は尚更。

 

特に自分は、懐疑的な人間なので、基本自分の目で見たり耳で聞いたりしないと納得しない。パソコンを選ぶ過程をブログ数記事に渡って書く輩です(だがそれがどうした)

 

 

というわけで田中泰延氏のブログを拝見。

 

www.machikado-creative.jp

 

って、おもしろw

 

 

読んだのは、映画のレビュー。
LALALAND、セッション、記憶にございません、色々見ました。


まず第一の印象として、全体を通じてよく調べられています。


粗筋だけじゃない、小学生的な感動シーンの寄せ集めじゃない。自身の考察、過去作品のオマージュなど、めちゃくちゃ調べられていました。自分も映画レビューを書いたことがあるが、一作品の映画についての書き方は「無限」にある。そして、田中さんのように、過去作品への言及まで風呂敷を広げていくと、いくら仕事であったとはいえ、相当な時間がかかったに違いないと思います。確実に1〜2日ではできない。

 

「物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛」だと著書で豪語できるほど、田中さんのブログには、ライターとしての丁寧さ、雑な言葉使いかもしれませんが、プロフェッショナリズムがありました。

 

その上で、田中節(?)。整理された「筋」の中に、自由に書き散らす。ただの論評にはせず、自身の本心を書き連ねていく。文章は、学びあり、脱線・遊びあり、笑いあり、そして感動ありでした。

 

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今回の記事はこれで以上です。


無論、書き手だけが読みたいモノを読まされる読み手の気持ちはどうなるという話もあります。ただ、忘れないで欲しい。そもそもこれは、ライター、「書く人」に向けた本なのだ。

 

論理的で精緻な文章術を望む方には向かないだろう。
街ゆくサラリーマンの企画書の書き方講座ではない。

 

ただ、一度手に取って読んで欲しい。

 

そして、最後にこれだけ言わさせて欲しい。

田中さん、疑ってごめんなさい。

 

 

ではでは。

2020.1.12 Sun