どうも、おかきです。
アートについて、自由気ままに語るコーナー、「アート漫談」です。
と言いつつ、前回、前々回がかなり大真面目な内容なので、最近方向性に迷う毎日です。
今回は、またしても真面目な内容です。
今回は主要な英アートメディア『Art Review』で毎年公表する、アート関連のランキング「Power100」ついて取り上げたいと思います。毎年11~12月ごろに公表され、今年2020年版のランキングも、明日の12月3日朝9時(日本時間)公表される予定です。いいタイミングなので、今回これについて取り上げたいと思いました。
- 1. Power 100って何?
- 2. 入り乱れるアートワールドを構成する人たち
- 3. 日本人アーティストってどうなの?
- 4. Power100を通して見えること①:マネーの力は偉大
- 5. Power100を通して見えること②:今見ているアートは、本当に現代のアートか?
1. Power 100って何?
「Power100」とは、英国アート雑誌『ArtReview』が2002年から毎年公表している、現代のアートワールドに携わる人たちの1~100位のランキングです。
曖昧な表現で一体どういうこと?と思うかもしれませんが、文字通りの意味。それ以外ありません。ここで知っていただきたいのは、アートの世界は、アーティストのものだけではないということです。作品を作るアーティスト以外にも、美術館の館長、展示会を企画するキュレーター、それにギャラリー経営者、コレクター、さらには(あまりランクインしませんが)批評家、思想家など、いろんな人が集まって今のアートワールドが形成されています。(最近だと、Twitterのハッシュタグ#Metooもランクインしてますね)
ちなみに、昨年2019年の1位は、グレン・ラウリー氏。現代アートの権威、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の館長です。そう、アーティストではありません。後にも述べますが、100人のうちいわゆるアーティストはせいぜい2割程度、多種多様な職業・地位の人たちが混ざ理混ざっているのです。Power100とは、そんないろいろ人たちのランキングなのです。
2. 入り乱れるアートワールドを構成する人たち
Power 100のもう一つの特徴を言うと、「その年現代アート界での活躍」を基準にした年間ランキングだということです。100というと結構あるように見えますが、絶妙なところで、前述の通り多種多様な人物がおり、あくまで「その年の活躍」で評価するので、毎年かなりドラスティックに変わります。
例えば、アーティストの場合、世界的な個展を開催し評価が高ければ、ランキング上位に占めますが、活躍が見られなくなると途端にランキング圏外に直行です。前述のMoMAの館長の場合は、大々的な拡張工事後の再開に加え、グローバル化・多様性を体現した美術館の取り組みが高く評価されました。
このアートワールド、現代資本主義社会と同様、マネーと作品が飛び交い、激しく人と物が動く世界です。ただそんな世界なので、アーティストだろうと何だろうと、このランキング100位にランクインしている時点でトップオブトップ、全員VIPです。前述の通り、各界プレイヤーの入り乱れているので、このランキングは、TIME紙の『100 most influential People(最も影響力のある人100選)』に近いところもありますが、アート業界の生々しさでいうと、Forbe紙『World's Billionaires list(世界長者番付)』に近いかもしれません。
もちろん、その年の活躍が、ランキングを選出員の目に止まるかどうかというところもあるので、恣意的な判断は入ってくるので、このランキングが絶対とはいえませんので、その点に関しては注意が必要です。ただ、数多の候補から、厳選されたトップ100ですから、ここで選出されれば、世界的に十分評価を受けている、ないし影響力を持つ人物たちであり、今のアートワールドを作っていると考えていいでしょう。
なお、このランキングには100名いますが、私はほぼ分かりません。現代アート好きの私ですが、知っているのは100人中せいぜい10人程度です。バンクシーなど、世間的にも知られている、超有名どころが数人、あと私があとで勉強してつけた知識量で、さらにもう何人か、というレベルです。現代アート好きを標榜していますが、グローバルスタンダードで言うと、実はまだまだなんです。(こういうのを意識すると意外と燃えるタイプなんですが)
3. 日本人アーティストってどうなの?
ここでよくある質問、じゃあ日本人アーティストってどうなの?という話です。
日本人は、日本人が大好きですからね。(私も日本人ですが)
で、結論から言うと、草間彌生さんが8位にランクインしています。「水玉模様」と「カボチャ」で有名なアーティストですね。(↓は半年前に読んだにも関わらずブログで取り上げられていない書籍)
日本人8位だ、やったー!!
と言いたいところですが、、、、残念ながら、昨年2019年のPower 100に入った日本人は、草間さん1名だけです。かなり高位であるのは事実ですが、少し寂しさを感じます。
以前、ブログでも取り上げた村上隆さんもランクインした経歴があり、ベルサイユ宮殿での個展など精力的な活動もあり、2003年にはなんと7位ですが、(無論今も活動されていますが)ランキングには近年登場せず。日本人アーティストはこの草間さん以外あまり出てきません。欧米アーティストは勿論、中国・韓国などアジアを含め、諸外国の存在感の方がやはり強いという印象です。
4. Power100を通して見えること①:マネーの力は偉大
最後にPower 100を通して見えることについて語っていこうと思います。
一つは、アートとマネーの関係です。先ほども言った通り、中には社会運動家も混ざっているのですが、ほぼ全員VIPです。現代資本主義社会において、ランキングが高い、ましてや高額アート作品が取り交わされるアートワールドであれば、当然マネーは切り離せません。
前述の通り、様々な人たちがランキングを占めると言いましたが、作品を制作するというよりは、作品で展示・売買・収集を行うコレクターやギャラリストが相当数を占めています。貴族がいなくなった現代、こういった人たちが「現代のパトロン」としてアート界を支えています。アートの価値を全否定するようですが、膨大なマネーが今のアートを動かしているのは間違いありません。アーティストは勿論は当然評価されてしかるべきですが、「影響力」という点では、ギャラリストなどの存在は無視できないでしょう。一方、かつてアート理論を展開し、活躍を見せた批評家・専門家といった人たちは鳴りを潜めています。少々寂しい時代ではあります。ただどこか歪で不安定な状況こそが、現代アートの世界を体現しているとも言えます。
実際、「実業家」としての経歴のある人物が、Power 100上位にランクインするがあります。アートコレクターのベルナード・アルノー(Bernard Alnault)は、今年2020年のForbe紙の長者番付で、あのビル・ゲイツに次ぐ第3位です。まあ、ルイヴィトン擁するブランド帝国LVMHの会長ですから当然でしょうか。
5. Power100を通して見えること②:今見ているアートは、本当に現代のアートか?
あと、もう一つPower 100で言えることですが、(こちらの方が重要なのですが、)世界というのは、多元化しつつあるということです。
欧米とそれ以外の国という、オリエンタリズム的な二項対立は今でも有効だと思います。アートに関しては、まだまだ欧米諸国の存在感は強く、語られるアートの言語・文法は圧倒的に欧米寄り、ランキングでも大半が欧米です。この辺りは、アート発展の近代史が、西洋社会の中で培われたのが大きいと思います。
ただ、今や日中韓の東アジア諸国の時代、いやそれらの国だけの時代も時期に終わります。東南アジア、さらにはインド・中東・南米・アフリカなど、グローバル化の波に乗って、どんどん経済圏は広がっていきます。道は舗装されなくとも、Wi-Fiなど通信環境は整備され、急速に経済発展していくことでしょう。アートに関しても同様で、これもグローバル化の波と、マネーの力がこれを実現しています。
それでは、日本の存在感が低下してしまう!と悲観論を述べる気は一切ありませんが、より世界は多元化していき、国家・地域は、均質化・相対化されつつあると言えます。もはやどこの人か?とか、そこまで重要視すべきでないと思うんですよね。正直ナンセンスです。もはや偏見でしかありません。そもそも世界的アーティストと言うのであれば、日本人だろうとあんまり関係ない気はしますね。日本で行われるアート展であっても、海外の人が企画しているのもザラです。アート活動の場で出身国の話になれば、あえて文化的なバックグラウンドを戦略として用いている、といった程度で見るべきでしょう。
また、現代アートシーンは、西欧中心とはいえ普遍的にアートの価値を認めています。世界中で現代アートは展開されているので、その知識・評価についてもグローバルであるべきでしょう。
例えば、昨年Power 100の10位にランクインした、インドネシアのアートコレクティブ「ルアンルパ(ruangrupa)」ってご存知でしょうか?(私はもちろん...知りません)「ドクメンタ」という有名なアート展があるのですが、22年の芸術監督に選ばれたアートコレクティブです。対して、私も皆さんもご存知バンクシーは19位です。(十分高いですが)
無論このランキング自体、恣意的な操作があるとは思いますが、もうアメリカが、日本が、とかそういう問題ではなくなってきているんですよね。活躍し注目を浴びているのは、過去の栄光にしがみつく先進国のアーティストではなく、今現在進行形で活動し、その努力が認められ、世界的に評価を受けている人たちだけです。アート理論の勉強を深めたり、作品を嗜んだりすることは結構なんですが(完全にブーメラン)、今の世界で起こっている事に目を向け、もっともっとその認識を拡大させる必要があるということです。現代アート好きなんで、はっきり言いますが、今日本に多数ある美術館のように、昔ながらの絵画ばかり眺めていていいのかなぁ。。なんて思います。
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今回は、これで以上です。
持論の展開は今回かなり控えめですが、このランキングが存在することを知らせることが今回の目的なので、十分だと思いました。このブログでアート記事を書こうと思った一つの理由に、こういった世界中のアートをどんどん取り上げていこうと思ったのがきっかけです。
自分のためにも何かやろうと思い、私が昨年末思い立ったのは、海外の現代美術館に行くぞ!だったんですが、、、。まああとはお察しということで。
明日「Power 100」の2020年版が公表されます。
また、次の記事では今年を振り返りつつ、語っていきたいなと思ってます。
ではでは。
2020.12.2 Wed 10PM
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