おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

【News】クリスチャン・ボルタンスキー逝去、世界的現代アーティストによる個展に行った思い出(Christian Boltanski: Lifetime展, 2019/3)

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

どうもおかきです。

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記憶に残る日というと、いろんな日が出てきます。
学校の入学式、部活動の試合、告白の日などなど、、、とはいえ、アートブロガーらしく、アートがらみで個人的に印象に残った日を取り上げようと思います。


先週2021/7/14、あるフランスの現代アーティストが亡くなりました。
2019年3月に大阪・国立国際美術館で催された彼の個展に行ったことがあるのですが、それ以来美術館に行くことが趣味の一つになり、特に現代アートへ傾倒していく大きなきっかけになりました。今回はそんな体験談を話ししていければなと思います。

 

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1. クリスチャン・ボルタンスキーってダレ?

思い出話に浸る前に、まずとある現代アーティストの話します。
名前はクリスチャン・ボルタンスキー(1944-2021)

フランスの現代アーティストであり、ユダヤ系という出自から、ホロコーストを匂わせる表現もありますが、彼のテーマは、「人の死」や「自己・他者の記憶」といった、政治・歴史を超えたかなり普遍的なテーマ。無名の人物写真や、所有者のいない日用品を使ったインスタレーション(立体作品)は、目に見えない「何か」の存在を示し、どこか「瞑想感」の漂う不思議な雰囲気のある作品ばかりです。

アートラバーなら是非気づいて欲しいのですが、2019年あたりは日本各地、さらには世界各地でアート展を開いており、活躍していました。現代アート版長者番付「Power 100」のランキングには載ったことはないものの、現代アーティストの中でも、かなり有名な部類に入ると思います。ダミアン・ハーストといった超絶大御所ではないにせよ、書籍とかにも名前が出てくるレベルです。

初めて知ったのですが、独学で進んだキャリアライフであり、1968年には個展を行い、それ以降50年近くアーティストとして活躍しました。そして、つい先週2021/7/14に長い生涯を終えました。

 

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2. 思い出:世界的アーティストが手がけたプロデュースの素晴らしさ

彼の個展に行ったのは、大阪・国立国際美術館で行われた「クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime(2019/2/9~2019/5/16)」に行った時でした。きっかけは一切なし、何気なくフラッと美術館に立ち寄ってみただけ。ボルタンスキーについて何も知リませんでした。

 

www.nmao.go.jp


ただ、そんな自分でも、このアート展で「刺激」を満たすことができました。


まず雰囲気ですが、なんと展示エリア一面が暗所。さらには音響。アート作品の一つなのですが、心臓の心拍音が鳴り響くなど、異様な雰囲気を感じさせます。当時の私は、まだアート展にそこまで足を運んでいなかったのですが、今見ても凝りようが凄い。アート作品の内容がどうこう以前に、「演出」とか「プロデュース」がすごいです。これは彼が、アート展を黒色で包むことで、「死」「記憶」を想起させる意図があるのですが、これほど気合が入っているアート展はありません。(パンフレットもオシャレ)

 

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その上でそれら演出が噛み合った、作品、そしてそれが紡ぎあげるストーリーが展開されていました。普遍的なテーマだからというのもありますが、ボルタンスキーの戦略なのかもしれません。よりテーマを純化させつつも、ストーリーで見る者に訴えかける。当時の自分には知識不足で、受け取りとめ切れない部分が多々ありましたが、とても満足いきました。あと作品の演出が多種多様でとても面白いです。白熱電球や、服を使った作品など、色々な数がありとても面白いです。大抵のアート展は、色んな作品を並べて終わり。「この作品は気に入ったけど、他は、、、。」というのがよくあります。今回も例に漏れませんが、そこまで気にならず。アート展全体としての個人的な評価はvery goodです。

 

特に好きだったのが、「ミステリオス(2017)」「アニミタス(2014,2017)」という作品でした。いずれもプロジェクター映像作品で、映画館並みのサイズで風景をひたすら流しているだけですが、会場の中心で設置されており、雰囲気を効果的に演出していました。

 

  • ミステリオス(2017)
    南米パタゴニアの砂浜・海辺を映した映像作品。砂浜に設置したラッパから不気味な音が鳴り、クジラが海辺から姿を現す。どこか悠久の時を感じられるドキュメント作品。パタゴニアでは、クジラが世界の起源を知る存在とされており、そのクジラに人間がラッパで問いかけようとしているとのこと。
  • アニミタス(2014,2017)
    砂漠と極寒地帯の風景をそれぞれ写した2作品。それぞれの風景には、風鈴のついた細長い棒を大量に地面に突き立てられており、とても幻想的な様相。会場の中には風鈴の音が鳴り響きとても落ち着く。

 

 

3. 存命のアーティストが手がける個展に行ってみよう

最後に軽い小話をしたいと思います。

先週亡くなられてしまいましたが、訪れたアート展は「存命」のアーティストの手によるものでした。前述の通り、日本各地で個展を開いておられてて、その後も何度かアート関連の紹介記事が掲載、彼自身もメディア出演し、コメントを残しています。そういったことが何度か続くと、またパンフレットを見返したくなるわけです。そうやってどんどん理解が深まっていく、また愛着が出てくる。そういったことができるのは、まさに現代アートの特権ではないでしょうか?

 

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今回の記事は、これで以上です。

 

なお、このボルタンスキーですが、非常に面白い人物で、定期的に一定額を受け取り見返りに、死去するまでアトリエを生配信し続ける契約をプロのギャンブラーと交わしていたようです。64歳の時にこの契約を結び、72歳以上生きないと元が取れない契約なのですが、4年分の儲けをちゃっかり得ています。他にも「心臓音のアーカイブ」という世界中の心臓音を集めた場所が香川県・豊島にあったりなど、色々と面白い話があります。


良かったら皆さんも、存命のアーティスト展に是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
パネルディスカッションとかいくと割と面白かったりしますので、是非行ってみてください。

 

ではでは。

 

2021.7.22 Thu 10AM 

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