おかきズム

元ニコ動実況者(断じて有名でない)が、社会人になってブログ。グッズレビュー、アート、映画書評を書いてます。

【おかきズム書評#5】 有名アートブロガーによるアート書籍登場!「いちばんやさしい美術鑑賞」青い日記帳

どうも、おかきです。

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以前少しだけ話しましたが、アートブロガーとして一念発起した2019年に、数々のアート系書籍を購入しました。今回はその時に購入した書籍を紹介したいと思います。

アートブログをやるなら、まずは先輩から教えを乞うべし!と思い、同じアートブロガーの方が執筆された書籍の紹介になります。 

 

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紹介する本:青い日記帳著、『いちばんやさしい美術鑑賞』、ちくま新書、2018年

 

1. だいたいこんな感じの本

アート系ブロガーとしては有名な、「青い日記帳」さん(いや先輩)のアート解説本。
2018年の初版と割と新しめの書籍になります。

本タイトルに「美術鑑賞」とありますが、鑑賞のノウハウは数ページだけです。本当の内容は、いくつかのアート作品を取り上げて、それらについての解説する、といった内容です。そう、よくある形式のやつです。


アート作品は、西洋(ルネサンス〜近代)、日本(室町〜現代)で取り上げられており、合計15作品。文庫本ですが、少し厚めの本にはなります。現在活躍されている池永康晟を除けば、近代以前のアーティストで固められています。(現代要素が欲しい)ただ、ガレ・並河靖之の作品、曜変天目など、絵画作品以外も紹介してくれます。

 

<掲載アーティスト> 


他の書籍と違い、特徴的なのは、掲載されている作品は実は全て国内の美術館で鑑賞可能です。(今後は分かりませんが、少なくとも執筆当時は可能)こういったコンセプトでチョイスされるのは、割と珍しいですね。ピカソの作品でも見たことがあまりない作品が取り上げられています。

 

 

2. ブログっぽい本

個人的な感想としては、見出しの通り「ブログっぽいな〜」と思いました。
「教養本」というよりは「文章を読む楽しみ」がやや強めです。そりゃ書いたのは、専門家ではなくブロガーなので当然なのですが(笑


とはいえ、書籍を通して、アート作品の内容・構図・表現方法、アーティストの来歴、歴史的背景など、たくさんの情報を提供してくれます。ときに見る者を困惑させるアートですが、そこはブロガー。わかりやすい解説をつけてくれています。また言葉遣い・表現もとても面白く、デュシャンを知るとは、「麻疹にかかるようなもの」という表現は、アート愛好家としては「いいね」を押したいと思いました。(ぜひ私のコメントにしてしまいたい)


ただ、全体として説明口調の野暮ったい説明・表現が多かったというのが正直な感想です。


初心者向けにも書こうとしたのか?、全体的に情報量が多め。サムネにも書きましたが、タイトル通り「いちばんやさしい」のか?というと、割と微妙です。アーティストの来歴、歴史背景、作品にまつわる逸話など、専門知識〜うんちくネタなどそこそこ多いです。少なくとも、もし「アートってそもそも何?」とか「ただ気軽にアート作品を眺めたい!」という人であれば、雑誌「Pen」「Casa」などのアート特集を読んだ方が面白いかもしれません。


あと、こればっかりは、印象の問題かもしれませんが、「思いをはせる」「想像が働きます」といった表現が散見され、著者の個人的な思い入れも入りすぎてる感はあります。(そういうところも含めブロガーっぽいなと思いました。)この本決して悪い本ではなく、長年のアートブロガー歴から出る知識量は多く、読めば得られるものも多いのですが、ちょっとそこだけ気になってしまいました。。。そこも「1つの尺度」として見ればいいのかなと思いますが、、個人的にあまりそう言うのは好きじゃないので。。。先輩、ごめんなさい。

 

 

3. 陶芸作品が見に行きたくなる本

この本、割と厳しめに書きましたが、もう一点だけ書きます。
全体の書籍の印象としては前述の通りなのですが、作品のチョイスについては高評価です。
特に絵画に拘らず、陶芸などにも手を出しているところが非常にいいです。

アートというと、絵画など平面作品がほとんどです。ルネサンスの宗教画、近世の歴史画、近代の風景画・抽象画。これがいわゆるアートとされますが、本来それだけに止まらないはずです。確かに、陶芸となると、「古臭い」「刺激がない」そんな印象がありますが、この本では、そんな陶芸への苦手意識から解放してくれます。

とはいっても、ガレのガラス陶芸、「曜変天目」、並河靖之の「七宝焼き」の3点なので、少々異端の部類には入りますが、「陶芸の世界に興味を持つのも悪くないかな?」、なんて思えるかもしれません。巻頭にフルカラーの綺麗な写真があり、解説を見ながら心ゆくまで楽しむことができます。

 

特に曜変天目は是非ともみたいと思います。内側の光彩が特徴的な茶碗で、そのうちの最上級の品。現存する3品の総称を曜変天目と言うのですが、ここでは通称「稲葉天目」と呼ばれるものが紹介されます。釉薬の効果で現れる、美しいブルーの斑点模様がこれまた綺麗。とてもそそられる美しさです。現代人の目で見てもこれは美しいと思える色彩なので、是非見てもらいたいと思います。

 

また、明治大正期に活躍した並河靖之の七宝焼も興味をそそりました。七宝焼きと呼ばれる、金属線で細やかな縁取りをして、釉薬で彩るというもので、とても微細で美しい。まさに「職人芸」といった感じです。読んだのはかなり前ですが、しっかりと今でも記憶しています。「藤花菊唐草文飾壺」という、恐らく覚えることはないであろう名称なのですが、あの美麗さだけは忘れません。平面絵画では現れないあの繊細さは是非見てもらいたいと思います。正直この人は知らなかったのですが、当時のパリ万国展覧会で金賞牌を受賞し、世界的に評価の高い人物のようです。

 

といった具合に、陶芸への新しい道が開けそうです。こういったことがあるから読書はやめられませんね。全体的な評価としてはマイナス気味に書いてしまいましたが、新しい世界を作ってくれたような気がします。是非展示会の機会があったら、見てみたいと思います。

 

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今回は、これで以上です。

少々ボリュームが多めの内容ですが、アートをある程度興味持っている人であれば、楽しめるのではないか?と思います。アート教養としても、趣味本としても楽しめる本となっています。個人的には先に挙げた、曜変天目七宝焼きについて知ってもらいたい!、そう思います。

 

ではでは。

 

2021.7.3 Sat 11PM

 

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