どうも、おかきです。
皆さんは、「歴史」が好きでしょうか?私はとても好きです。
大きな歴史の流れの中で、人の動き・社会の変化・思想の流れを知ることは、知的好奇心をくすぐります。アートについてであれば、なおのこと好きです。
このアートブログを始めるにあたり、アートの通史がまとまった本が欲しいと思いました。
私は総じて「アート」が好きであるものの、印象派以降の近現代アートの歴史の「流れ」がとても好きです。しかし、その流れも過去の蓄積があってこその歴史。本屋に行けば、アートの通史本は数多くありますが、是非1冊だけでも手元に置きたいと思っていました。なので、本屋・図書館で数あるアート通史本を比較・検討していきました。
今回は、数あるアート通史本の中で、私の心の中の(壮絶な)コンペを勝ち上がってきた本を紹介したいと思います。
1. だいたいこういう内容
名前にある通り、欧米のアートの歴史についての本です。
時代は、ルネサンス以降から〜ポップアートまで。
ルネサンス辺りを重視して近代の写実主義・印象派でほぼ終わってしまう本も数多くあるので、それらと比較すると、割と時代は広めと言えるかもしれません。(古典古代、中世アートファンには申し訳ない)さらに、近代でも世紀末絵画、エミール=ド=パリなど、多様な近代画を取り揃えています。
構成は、一風変わった「二弾構成」になっています。
まず第1章では、〇〇派、○○主義(イズム)といった、大きなアート史の潮流をさわりだけ話して、通過した後、第2~3章になって、またルネサンスから開始。各時代のアートの潮流を代表する作品(合計23作品)を一つ一つ取り上げていきます。なお、作品の画像はカラー写真。結構きれいな部類です
あと、「武器になる知的教養」と、タイトルに物騒なモノがひっついていますが、基本的には内容は欧米アートの通史。巻末の10ページほどを費やして、心構えを載せてくれています。
ちなみに、著者は秋元雄史(ゆうじ)氏。
ベネッセグループで、毎回100万人規模を動員する「瀬戸内ビエンナーレ」を立ち上げ、数多くの美術館の館長も務めあげた功績を残している方です。特に、現代のアートシーンにも精通している方なので、とても信頼がおけます。よくあるアート通史本だからこそ、誰が書いているのか?は、気にしておきたいものです。
(↓この本も秋元氏が書いています、また紹介します。)
2. 誰にでも勧められるアート通史本
私自身の感想を述べると、アート通史本としては申し分ない出来です。
群を抜いて秀でており、個人的には満点の星5★★★★★です。
理由としては、主に二つです。
1つは、アートの流れがとてもわかりやすい「構成」だからです。
欧米のアート史は、政治史と同様、とてもドラマティックに変化します。著者秋元氏自身も「革命の歴史」と表現するほど。技法・モチーフが一気に変わりますし、特に近現代史に移行すると、「アートとは何か?」といった、概念や向き合い方も大きく変貌を遂げてしまうので、アートに不慣れな人にとっては、とても難解です。
ただ、そういった人でもわかるように、1章目でアートの通史をさわりだけ触れ、2章目以降で各作品について語る構成になっています。1度触れた内容をもう一度おさらい、しかも具体的な作品を示しながら解説してくれるので、理解が進みやすいです。
2つ目は、「豊富な数の絵画」をテンポよく楽しむことができるからです。
この本の作点数は「23」。先ほども述べた通り、エコール=ド=パリなど、アート通史本ではあまり入ってこないようなものも入れてくれており、チョイスもいい感じです。また、各作品に「過不足」なく解説が入っていて、ちょうどいいテンポで読み進めることができます。
23と聞くと少ない気もしますが、解説を数ページ挟んだ結果なので、通常の本のサイズだと限界レベルです。これ以上多いと解説が極端に短いか、本が分厚いかだけ。個人的には、不毛な「ウンチク」祭りが大っ嫌いなので、要所を抑え過不足なく解説をするこの本が好印象です。
また、前述の「わかりやすい構成」も相まって、とにかくストレスなく読むことができます。流れを一度抑えていますから、カラーの挿絵を鑑賞しながら、楽しく本を読み進めることができるのです。
まさに「読んで楽しい、見て楽しい」本なのです。
3. 変化の歴史を俯瞰して見ること。作品を楽しむこと。
しつこく繰り返しになりますが、この本は歴史の「流れ」を掴むのに最適な本だと思います。
よくあるアート通史本では、〇〇派とか、〇〇イズムといった、強調しやすい「単語」だけやたら並べたてる本があります。確かにそういった本が、一見読みやすいように見えますし、取っつきやすいのは事実です。
ただ、一方でそれには弊害があります。それは単語で全てが集約、まとめられてしまっているため、断片化しやすいところです。次のページに行けば話が断絶、連綿と続く歴史の「流れ」が見えなくなるのです。
実際の歴史というのは、「流れ」を大事にします。アートの歴史も、過去のアート作品に影響を受けたり、社会情勢の変化に作用されたりします。この本についても、1作品ごとにフォーカスするようなまとめ方をしているので、他の通史本と似たようなところはありますが、それと同時に「流れ」も意識しています。何より作品ごとの解説が程よいレベルでまとめられているので、さらっと読むことができます。
以前にも述べましたが、私は、印象派以降の近現代史は、アートの歴史の中で大好物です。本格的な専門書に比べてはやや少なめではありますが、この大好物の歴史をサクッと味わえるのはとてもいいです。
4. 最終章まで読んでください。
ポップアートまで到達し歴史の旅を終えた後、この本の巻末、最終章では著者からのアート鑑賞のアドバイスが挟み込まれています。この章は、たった10ページ程度の短い章ですが、どれも真実をついたアドバイスばかり。アート好きであれば、是非とも読んでいただきたい。
- 「感じるままに見ればいい」は嘘
日本でよく叫ばれている「感じるままに見る」。ただそれは日本開国時に隆盛していた「印象派」における感覚的な表現の重視をもろに影響を受けているだけです。アート作品一つひとつを理解していくには、歴史的背景などを理解しなければ、本当の意味で作品を理解することはできません。そう、タイトル通り「知的教養」が必要なのです。 - 抽象絵画は体験が狙い
具体性のない抽象絵画だから、そもそもアーティスト側も鑑賞者からの理解も求めていない。当然と言えば当然ですが、意外とこう表現してくれる本が少ないです。 - 現代アートを楽しむことは、知的ゲームのようなもの
「知的ゲーム」という表現は、現代のアートシーンで活躍している秋元氏だからこそ出る表現かなと思います。複雑に多様化する現代で、作品も同様に多様化、そして複雑化し、言語化が困難なレベルとなっています。もはやどういった文脈で読み取れば分からないというような状況です。ただ、ここで著者は「いろんな解釈があっていい」と教えてくれます。その複雑さこそが、ある意味アートの多様性を証明しており、この事実は、迷えるアート鑑賞者にとっては、まさに「福音」と言えるのではないでしょうか。
以前紹介した「現代アート、超入門!」といい、いい本は最終章に至るまで素晴らしさが突き抜けています。「終わり良ければ全て良し」なんて言葉がありますが、本当にいい本であれば、「最初も良し、中間も良し、最後も全て良し」なのです。
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これで以上です。
今回紹介した本は、本当に私がオススメできる一冊となっております。
今後、この本と比較するために読んだ、同じアート通史本を紹介していこうと思っていますが、この本より秀でる本はないと考えています。もしこの本が気に入ったのであれば、是非読んでみてください。
ただ、、、もし一点だけケチをつけるとしたら、現代アートを1作品だけでも入れて欲しかったなぁ、。。。まあいいか。
ではでは。
2020.9.14 Mon
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